ふわふわしてて
やわらかくって
せんたくものの匂いと
おかあさんの匂いがする
ガーゼハンカチ
きめのこまかーいやつ
いつもほっぺにすりすりして
どこにいくにも何をするにも
はなさない
洗いたてより
何日かたってすこしくたびれて
やわらかーくなったときのシルキータッチが最高
手を拭くなんて言語道断
肌触りをたのしむためのもの
それでも
一週間もすれば当たり前に
薄汚れてくるのだけれど
片時も離したくなくて
なかなか洗おうとしなかった
たまに行方しれずになって
血眼になってさがして
なくなるなんてありえない
それさえあれば
ひとりぼっちのお留守番なんて
ちゃらへっちゃらだったのに
ある日突然消え失せた
遊ぶ事が仕事で
泣いたり怒ったりしても
翌日にはわすれてしまう
子供には
ありえないくらいの
喪失感と落胆
一週間たっても
一ヶ月経っても
おかあさんに
『ハンカチみてない?』
と聞き続けた
20年以上たった今でもたまに思い出す
あのガーゼハンカチを超えるほど
肌触りのよいものに
未だ出会えず
ハンカチ離れができない我が子に不安を抱いた母は
幼い私が命の次に大切にしているガーゼハンカチを
なんとこっそり捨ててしまったのです。
優しい母がそんなことするはずないと信じて疑わなかった私が
何度となくハンカチは?ハンカチみてない?
と聞く度に、胸を痛めた事でしょう。
気付いたのは物心ついてからだったのですが
母の心中を察すると、とても問いただせませんでした。
とりあえず心の中で鬼!!と叫んで事を収めた次第です。
というより、ぬいぐるみという新たな刺客が現れただけだったのか
それでもあのガーゼハンカチをこえることはなかったですが
ぬいぐるみの中に完全オリジナル世界に一つだけの私の完コピ人形がおりまして
とてもぞんざいな扱いなどできなかったわけです。
そういう、子供の頃の常時携行品『ねんね』と呼ぶらしいでね。(地方限定?)
チャーリーブラウンがいつももっているブランケット
あれです。
みなさんもきっとそれぞれ『ねんね』をお持ちだったことでしょう。
それがなくて困るわけではないのだけれど
執着というより愛着
そばにあると落ち着くもの
母親の胎盤の中にいたときの無条件の安心感
眠りから覚めた時に無意識に探す温もり
本能で求めてしまうものなのかもしれません
時間が経って歳を経ても
ねんねはなくなったようでいて
移り変わっている
ガーゼハンカチを卒業してぬいぐるみに着手したように
無くなったものは手放して
また新たに、大切なものが生まれる
執着というより愛着