16 September 2010

ねんね

ふわふわしてて

やわらかくって

せんたくものの匂いと

おかあさんの匂いがする

ガーゼハンカチ

きめのこまかーいやつ

いつもほっぺにすりすりして

どこにいくにも何をするにも

はなさない

洗いたてより

何日かたってすこしくたびれて

やわらかーくなったときのシルキータッチが最高

手を拭くなんて言語道断

肌触りをたのしむためのもの

それでも

一週間もすれば当たり前に

薄汚れてくるのだけれど

片時も離したくなくて

なかなか洗おうとしなかった

たまに行方しれずになって

血眼になってさがして

なくなるなんてありえない

それさえあれば

ひとりぼっちのお留守番なんて

ちゃらへっちゃらだったのに

ある日突然消え失せた

遊ぶ事が仕事で

泣いたり怒ったりしても

翌日にはわすれてしまう

子供には

ありえないくらいの

喪失感と落胆

一週間たっても

一ヶ月経っても

おかあさんに

『ハンカチみてない?』

と聞き続けた

20年以上たった今でもたまに思い出す

あのガーゼハンカチを超えるほど

肌触りのよいものに

未だ出会えず




ハンカチ離れができない我が子に不安を抱いた母は

幼い私が命の次に大切にしているガーゼハンカチを

なんとこっそり捨ててしまったのです。

優しい母がそんなことするはずないと信じて疑わなかった私が

何度となくハンカチは?ハンカチみてない?

と聞く度に、胸を痛めた事でしょう。

気付いたのは物心ついてからだったのですが

母の心中を察すると、とても問いただせませんでした。

とりあえず心の中で鬼!!と叫んで事を収めた次第です。

というより、ぬいぐるみという新たな刺客が現れただけだったのか

それでもあのガーゼハンカチをこえることはなかったですが

ぬいぐるみの中に完全オリジナル世界に一つだけの私の完コピ人形がおりまして

とてもぞんざいな扱いなどできなかったわけです。


そういう、子供の頃の常時携行品『ねんね』と呼ぶらしいでね。(地方限定?)

チャーリーブラウンがいつももっているブランケット


あれです。


みなさんもきっとそれぞれ『ねんね』をお持ちだったことでしょう。



それがなくて困るわけではないのだけれど


執着というより愛着


そばにあると落ち着くもの


母親の胎盤の中にいたときの無条件の安心感


眠りから覚めた時に無意識に探す温もり


本能で求めてしまうものなのかもしれません


時間が経って歳を経ても

ねんねはなくなったようでいて

移り変わっている

ガーゼハンカチを卒業してぬいぐるみに着手したように

無くなったものは手放して

また新たに、大切なものが生まれる


執着というより愛着